原価計算と経営・量産品(大量生産)製造業における原価管理

原価計算と経営

量産品(大量生産)製造業における原価管理

大量見込生産で製品を製造する事業を行っている会社においては、製品の原価を把握していなければ、製品で利益が出るのかどうか判らないことになってしまいます。
また、通常は期末時点で完成していない製品があるものと思われますので、仕掛品の金額計算も必要ですし、製品の在庫もあるので製品の原価計算もしておかなければ決算書を作成することも出来ないことになってしまいます。

このため製造業を営んでいる場合は、原価計算及び原価管理を行う必要があることとなります。しかし中小企業(特に小規模企業)の場合は原価計算のための専用ソフト等を導入することは金銭的に難しい状況にあるかと思われます。
そこで、一般の会計ソフトとエクセルを利用して簡便的に原価計算及び原価管理を行う方法について以下に説明致します。

例として、製品Aと製品Bの2種類の製品を製造している企業を想定します。

まず製品の「部品構成表」を作成する必要があります。これが無いと部品管理(部品の在庫管理及び仕入対応)が出来ません。また、製品の原価を把握することも出来ません。

下記にエクセルでのサンプルを掲示します。

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次に製品ごとの生産数量、販売数量、仕掛品、在庫を把握するために生産販売管理表等をエクセル等で作成します。また部品の在庫数量、仕入数量及び金額を把握するため仕入明細管理表等も作成します。
これらについては、販売・仕入管理用のソフトで構成部品管理(商品の部品展開)が出来るものを使用することが出来ればより簡便に管理できます。

これらをもとに、部品ごとの単価(材料費、労務費、経費)を計算します。

まずは材料費についは、計算例のエクセルの一部を下記に示します。(この例では総平均法で計算しています。)

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労務費・経費については、会計ソフトにて一か月分のデータを集計します。
一か月分を集計したものを下記に示します。

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労務費・経費について配賦をする為に、「賃率」と「配賦率」を計算します。部品構成表と上記数値等をもと作成したサンプルを示します。

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これらの資料から製品別の実際の原価を把握するため「原価計算表」を作成します。下記がその一例です。

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これで、製品ごとの製造原価と仕掛品の金額を把握することが出来るようになります。ただし、これをそのまま会計ソフトに入力するわけにはいきません。そこで、原価計算の数値と会計上の数値を合わせる処理が必要となります。下記にそのサンプルを示します。

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これらにより計算された、期末(月末)仕掛品、棚卸等の数値を会計に入力すれば、以下のような製造原価報告書を作成することが可能です。

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小規模企業の場合であれば、一般の会計ソフトとエクセル等を使用することにより(原価計算の各種資料を作成する必要はありますが。)原価計算と原価管理を行うことができます。

(注)この方法を行う場合には、事前に税務署に届出等が必要になりますのでご注意願います。

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「原価計算のセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ものづくり会計研修会」をご覧ください。

また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。

 

原価計算と経営・受注品製造業の原価管理

原価計算と経営

受注品製造業の原価管理

製品を受注して製造する事業を行っている会社においては、それぞれの製品の原価を把握していなければ、それぞれの製品で利益が出るのかどうか判らないことになってしまいます。

また、通常は期末時点で完成していない製品があるものと思われますので、仕掛品の金額を計算しておかなければ決算書を作成することも出来ないことになってしまいます。

このため製造業を営んでいる場合は、原価計算及び原価管理を行う必要があることとなります。しかし中小企業(特に小規模企業)の場合は原価計算のための専用ソフト等を導入することは金銭的に難しい状況にあるかと思います。

そこで、一般の会計ソフトとエクセルを利用して簡便的に原価計算及び原価管理を行う方法について以下に説明致します。

製品別の金額を把握する必要がありますが、一般の会計ソフトではそうような入力をするようにはなっていません。

そこで、補助簿を使用することによって製品別の金額を把握するようにします。

購入部品代とか外注加工費などで、使う製品ごとに金額を把握することが可能なものについては、製品ごとに補助簿を作成します。
つまり、購入部品費の勘定に“製品X”という補助簿を作成して、そこに“製品X”の為に購入した部品の金額を入力すれば、“製品X”の購入部品費は自動的に集計されることとなります。

製品“304”~“405”の補助簿を作成した場合での4月分を集計したものを下記に示します。(この例では、部品費と外注加工費で作成してあります。)

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次に、加工する材料等については補助簿を作成せず、そのまま購入したときの金額を入れていくようにします。労務費・経費についても同じです。(この後、集計した材料費・労務費・経費を一定の基準で製品に配賦(分配)します。)
一か月分を集計したものを下記に示します。

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ここで、配賦の方法ですが、材料費は製品に使用した重量を、労務費・経費は製品の材料加工及び組立に直接要した作業時間を使うこととします。
そのためには、作業者がどの製品にどのくらい材料を使用して、その加工等にどのくらいの時間を要したかを把握しておく必要があります。そのためには、作業日報等を作成することが大切です。

その作業日報等を毎月集計して製品別(JOB別)の作業表を作成します。
下記に一例を載せておきます。

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これらをもとに、原価計算表をエクセル等で作成します。

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このように、材料費・労務費・経費を製品(JBO)ごとに配賦(分配)することが出来ます。また、月末の材料費の棚卸高も計算できます。

これにより、当月発生分の金額を製品ごとに分け入ることが出来ましたので、次に前月末の仕掛品の明細等を使って、原価管理表を作成します。

下記に示します。

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この様に、製品別の原価及び売価により製品ごとにどのくらい利益が発生したのかわかると同時に、月末の仕掛品の金額も判明します。

これらにより計算された、材料費、仕掛品等の数値を会計に入力すれば、以下のような製造原価報告書を作成することが可能です。

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小規模企業の場合であれば、一般の会計ソフトとエクセル等を使用することにより(製品ごとの作業日報をしっかり作成する必要はありますが。)原価計算と原価管理を行うことができます。

(注)この方法を行う場合には、事前に税務署に届出等が必要になりますのでご注意願います。
もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「原価計算のセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ものづくり会計研修会」をご覧ください。

また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。

原価計算と経営・飲食店の経営(営業時)

飲食店を始めようとする場合にメニューの原価が大切であることはブログ「原価計算と経営・飲食店の経営(開始時)」に記載しております。今回はお店を経営していく中で自店の状態を把握する方法について説明したいと思います。

税務署に申告をするためには、売上・仕入・経費の金額を帳簿や会計ソフト等により集計して決算書を作成する必要がありますので、そこまでは行っていると思います。

この場合、売上はレジスター等により集計された1日分の金額をまとめて入力するのが一般的ではないでしょうか。また、仕入・経費等についても請求書や領収書等の金額をそのまま入れていると思います。

決算書を作成する場合は、これで問題はありませんが、開店時に考えていた利益が実際にはどうなったか、当初の予定どおりなのか等は分かりません。そのため、問題があった場合(利益が出ない等)にも、その対処方法を検討することが出来ないこととなります。

そこで、“原価計算”を利用することによりお店の現状を把握することが必要となります。そのためには事前(開店前等)に原価計算表等で標準原価を把握しておく必要があります。この先は、標準原価を事前に把握しているものとして説明します。(標準原価の把握方法は、ブログ「原価計算と経営・飲食店の経営(開始時)」を参照して下さい。)

原価計算により分析を行うためには、決算書を作成した時に入力したデータだけでは不十分です。

さらに必要とされるデータとしては、

  1. 売上については商品(メニュー)別の売上数の明細。
  2. 仕入については仕入れた商品別の数量(重量等)の明細。
  3. 経費についてもその明細。
  4. 人件費についてはどの作業にどのくらいの時間がかかった等の明細。

などです。

これらのデータを毎日集めることが出来る方は、これらのデータを分析して詳細な内容を検討することが出来ますが、実際にはなかなか難しいのではないでしょうか。

そこで売上の明細だけでも集めることが出来れば、原価計算による分析が可能となります。

売上の管理については一般にはレジスターを使用していると思われます。レジスターに商品ごとの売上が出力できるものを使用すれば売上の明細データを入手することは可能です。レジスターによってはそのデータをパソコンに移せるものもありますので、この場合は手でパソコン等に入力する必要もなくなります。

売上の詳細データと標準原価表があれば、当初(開店時)との相違点等についてはある程度の分析が出来るようになります。

例として、ブログ「原価計算と経営・飲食店の経営(開始時)」で作成した“ラーメン店”での標準原価等を利用して計算したものを以下に表示します。(前提として、一か月分のデータを会計として入力し“損益計算書”が出来ているものとします。)

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このように事前に作成していた標準原価と実際原価を比較することにより、当初考えていた材料費よりも発生している材料費が多いことがわかります。また、工数(人件費)はほぼ考えていた範囲であり、経費は考えていたより出費が多いこともわかります。これらにより、材料費と経費について対応を検討すれば良いことがわかります。

さらに細かく分析しようとするならば、仕入の明細を集計して分析するとか、数か月分のデータを集めてそのバラツキ等からメニュー別の影響度を分析することも考えられます。

この様に、原価計算を行うことにより現状を分析することが可能となり、どの様にしたら経営を良くできるかも検討することが出来るようになります。これらを行うことが経営上大切です。

 

ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。

原価計算と経営・飲食店の経営(開始時)

原価計算と経営

飲食店の経営(開始時)

飲食店を始めようとする場合には、メニューを作成する必要があります。メニューの作成時には商品の値段を決めなければなりませんが、その際に原価を把握していなければ利益が出るのかどうかも判らないことになってしまいます。

例えば、ラーメン店を始めることとして周りのお店の状況を見てラーメン一杯の値段の平均が820円だったので800円で売ることとしたとしても一杯を作る金額が分からなければ利益が出るのかどうか分かりません。周りのお店で利益が出ていいたとしても、同じ作り方をするとは限らないからです。周りのお店のラーメンはチャーシューを1枚入れていたが、うちでは人気が出るように3枚入れようとしたら、チャーシューの原価が分からなければ他店より2枚増やして利益が出るかどうかわからないことになります。

そこで、原価を知るために「原価計算」が必要となってきます。一般にはエクセル等で作られた原価計算表で計算するのですが、通常の原価計算では“材料費”、“人件費”、“経費”を合わせて計算します。メニューの原価計算をする場合には“材料費”だけで計算する場合もありますが、“人件費”を含めて検討しておく方がのちのち役に立つ場面がでてきますので含めて計算します。“経費”については利益を考えるときにまとめて考える方法がありますので原価計算には含めません。この方法は原価計算では「直接標準原価計算」といいます。

例として、ラーメン店でラーメンの原価を計算するものの一部を載せておきます。例として作ったものですので実際とは異なっていることもありますが、雰囲気はわかると思います。

 

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このように、事前に作っておく“スープ”や“チャーシュー”は別に計算する必要があります。

メニューに載せるものの原価を計算しましたら、値段(売価)を決める作業に取り掛かることとなります。

この例では原価が278円になっていますので、この金額を使って考えてみます。500円でいいのでしょうか、800円なら大丈夫なのでしょうか、それを知るためには原価以外の金額、“経費”を知る必要があります。

売上から原価の合計を引いて“経費”を引いた残りが利益となります。“経費”の中には、電気・ガス・水道代や家賃などが含まれますので、自宅の一部でお店を開くのと駅前の一等地にお店を借りて開くのでは大きな違いが発生します。

そこで、利益がいくら出るかを計算するために、「損益計算」が必要になってきます。エクセル等で簡便な表を作成しておくと便利です。

例として、先ほどのラーメン店で損益を計算したものの一部を載せておきます。ラーメン以外にワンタンメン等も追加してみました。

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この場合ですと、一か月に30万円強の利益が出ることとなります。

ここで重要なのは、売上の見込数量をどの様に決めるかということです。いくらお客様が来店されてもそれに対応して商品を出せなければ売上を増やすことは出来ませんので作るスピード等によって限界があることになります。そこで一杯当りの作成時間なども必要となってきます。また、作業の順番等も関係しますからそれを考慮するためPART図などの利用を考える必要があります。さらに、値段によって来店数も変わると思われるため売値を含めたシミュレーションも考える必要があります。

例えば、この例でラーメンの売価だけを500円にしたら、営業利益は赤字になってしまいます。

この様に、このシミュレーションは十分に注意して行う必要がありますが、これを行わないで値段を決定すると、実際に営業して結果が出るまで儲かるのかどうかは分からなくなってしまいますし、どの様にしたら経営が良くなるかも分析できなくなってしまいます。これらを事前に行うことが大切です。

 

ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。