原価計算と税務
製造間接費(税務上の特例)
<会計上>
原価計算において製造間接費とは、どの製品の製造に消費されたのかがはっきり区別できない原価であり、各製品に一定の基準によって按分するものです。具体的には、間接材料費・間接労務費・間接経費です。
材料費、労務費、経費のうち、間接材料費、間接労務費、間接経費について、その発生額を製造間接費元帳の各費目別勘定口座の借方に個々に計上し、これを一定の手続きによって各製品へ配賦をすることになります。
配賦の方法としては、
「実際配賦」
(配賦を製造間接費の実際額に基づいて行う方法。)
1.製造間接費の配布方法
①製造間接費の集計
②配賦基準発生数の集計
③製造間接費配賦率の算定(①÷②)
④製品別に製造間接費を配賦(③×製品別の配賦基準発生数)
2.製造間接費の配賦基準
製造間接費を配賦するための合理的な配賦基準として次のものがあります。
(1)価額的基準
直接費の金額を基準とするもので、3つあります。
① 直接材料費基準
② 直接労務費基準
③ 素価基準(①と②の合計)
(2)物量基準
製造活動に要した物量を配賦基準とするもので、4つあります。
① 生産量基準
② 重量基準
③ 直接作業時間基準
④ 機械運転時間基準
上記の方法には
① 計算が遅延する。
② 製品の実際単価原価が操業度の変動によって、いちじるしく変化する。
という問題があります。
そこで、事前にあるべき配賦率を算定し、計算期間を通じてこれを使用する方法である
「予定配賦」があります。
<税務上>
税務上、「製造原価に算入すべきものの判定、直接費と間接費の区分、間接費の配賦基準等は、法令等に別段の定めがあるものを除いて、適正な原価計算の基準によること」とされているため、会計上の方法を適用していれば原則的には問題はありません。
ただし、税務上には
「法人の事業の規模が小規模である等のため製造間接費を製品、半製品又は仕掛品に配賦することが困難である場合には、その製造間接費を半製品及び仕掛品の製造原価に配賦しないで製品の製造原価だけに配賦することができる。」
という特例があります。
この方法で行えば、直接費だけで原価計算を行い、間接費はまとめて決算時に製造原価を算入すればよいことになります。
しかしこの適用を受けるためには、「事業の規模が小規模である等」と限定されている上に、具体的にそれがどの程度を示すか明らかでないため、この方法が税務上で否認される可能性があります。
特例を適用した場合とそれが認められない場合(基本的な原価計算の場合)での差異の例として、
材料費2,000円、加工費2,000円、間接費は製造に使用する2億円で耐用年数10年の機械の償却費のみとし、年間1万個生産して、毎年2千個の仕掛品(完成換算率は1)があったものとします。
特例の場合の仕掛品の金額は
(2,000+2,000)*2,000=8,000,000
となります。
基本的な原価計算であれば、
1個当たりの経費:200,000,000*0.1/10,000=2,000
仕掛品の金額は
(2,000+2,000+2,000)*2,000=12,000,000
となります。
上記の差額(4,000,000)だけ基本的な原価計算の方は売上原価が少なくなることになります。
この様な状況で税務調査行われて特例が認められなかった場合、利益を少なく申告していたことになり申告漏れを指摘され修正申告(追徴税額)が発生します。
そのため、特例の適用には注意が必要です。
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