原価計算と税務
特別償却の取扱い(ソフトウェア等について)
特別償却による償却額は、会計上の正規の減価償却手続によって費用配分されるものではなく、租税政策上の優遇措置として損金算入される項目なので、損益計算の観点からは費用性が認められません。
しかし、税法上では、
普通償却費・特別償却費ともに、「償却費として損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額を損金に算入する」
と規定されているため、確定した決算において償却費として損金経理することが必要になります。
そこで、租税特別措置法施行令では以下のような方法を認めています。
- 償却費として損金経理:
償却費として費用に計上し、資産の帳簿価額を減額。
(減価償却費) ×× (減価償却累計額) ×× - 損金経理による積立
償却費として費用に計上し、特別償却準備金(負債)として積み立てる。
(原則として、7年間に亘って均等額を取り崩し益金に算入します。)
(減価償却費) ×× (特別償却準備金(負債)) ×× - 剰余金の処分による積立:
剰余金の処分により準備金として積立てる方法。
(この場合、税務上は申告書で申告調整が必要となります。また、(2)と同様に
原則として7年間に亘って益金に算入します。)
(繰越利益剰余金)×× (特別償却準備金(純資産)) ××
株式を上場している企業等では、上記3.の方法を適用することとなりますが、中小企業では、計算事務に手数がかかるため通常は1.の方法を選択していることが多いかと思います。
このあとは、1.の方法での説明とさせていただきます。
1.会計上
製造等に使用される設備等に特別償却が適用された場合は、原価計算基準においては非原価項目となります。
<非原価項目>
非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目をいい、
おおむねつぎのような項目である。
(3)税法上とくに認められている損金算入項目、たとえば
1.価格変動準備金繰入額
2.租税特別措置法による償却費のうち通常の償却範囲額をこえる額
とあります。
そのため、原価に算入されるのは普通償却の分のみとなり、特別償却の分は別建てにして特別損失の項目に記載することとなります。
2.税務上
原則として製造等に使用する固定資産の償却費は製造原価に算入することとなっています。
そうなると、会計上と税務上の製造原価が合わなくなってしまうこととなりますが、税務上は以下のような特例を設けています。
(製造原価に算入しないことができる費用)
次に掲げるような費用の額は、製造原価に算入しないことができる。
(3)措置法に定める特別償却の規定の適用を受ける資産の償却費の額のうち特別償却限度額に係る部分の金額
例として、製造に使用する100万円のソフトウェアを購入して、これが「中小企業等投資促進税制」の適用を受けることが出来たものとします。また、購入・使用開始は期首にあったものとします。(消費税は税抜経理)
ソフトウェアの法定耐用年数は5年、中小企業等投資促進税制の特別償却限度額は30%ですので、
初年度
普通償却分:1,000,000*0.2=200,000
特別償却分:1,000,000*0.3=300,000
(減価償却費)(特別償却費) |
200,000 300,000 |
(減価償却累計額) |
500,000 |
(製造間接費) |
200,000 |
(減価償却費) |
200,000 |
(特別損失) |
300,000 |
(特別償却費) |
300,000 |
2年度
普通償却分:1,000,000*0.2=200,000
(減価償却費) |
200,000 |
(減価償却累計額) |
200,000 |
(製造間接費) |
200,000 |
(減価償却費) |
200,000 |
となり、原価計算上は毎年均等な金額が算入されることとなります。
もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「原価計算のセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ものづくり会計研修会」をご覧ください。
また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。