原価計算と税務
材料費の計算(棚卸資産の評価方法)
原価計算において、材料費を計算する場合には消費数量に消費単価を掛けることにより算出していますが、その時の消費単価の計算方法としては、
- 先入先出法
- 移動平均法
- 総平均法
などが一般です。
また、期末材料費についても、実地棚卸の数量に上記方法のうち選択したものにより計算しているものと思います。
税法上、認められている棚卸資産の評価方法には、
- 個別法
- 先入先出法
- 後入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 単純平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
の8つがあり、さらにそれぞれに原価法と低価法があるため厳密には16通りの評価方法があります。
税法上では、法定評価方法というものがあります。これは、棚卸資産の評価方法について税務署に届出をしていない場合に、これで計算しなさいというものです。
棚卸資産の法定評価方法は「最終仕入原価法(原価法)」です。
最終仕入原価法とは、
(期末棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当該事業年度終了の時から最も近い時において取得をしたものの一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法)
です。
そのため、届出をしていないことを知らないで例えば「総平均法」で計算してしまうと問題が発生することになります。
次の例で確認したいと思います。(期末材料は実地棚卸の数値とします。)
総平均法
摘要 | 単価 | 数量 | 金額 | |
4月1日 | 期首材料 |
10,000 |
100 |
1,000,000 |
6月1日 | 材料購入 |
12,000 |
200 |
2,400,000 |
7月1日 | 材料消費 |
14,000 |
100 |
1,400,000 |
1月1日 | 材料購入 |
18,000 |
200 |
3,600,000 |
2月1日 | 材料消費 |
14,000 |
300 |
4,200,000 |
3月31日 | 期末材料 |
14,000 |
100 |
1,400,000 |
消費単価=(1,000,000+2,400,000+3,600,000)/(100+200+200)=14,000
これにより、当期に材料費となるのは5,600,000となります。
最終仕入原価法
摘要 | 単価 | 数量 | 金額 | |
4月1日 | 期首材料 |
10,000 |
100 |
1,000,000 |
6月1日 | 材料購入 |
12,000 |
200 |
2,400,000 |
7月1日 | 材料消費 |
13,000 |
100 |
1,300,000 |
1月1日 | 材料購入 |
18,000 |
200 |
3,600,000 |
2月1日 | 材料消費 |
13,000 |
300 |
3,900,000 |
3月31日 | 期末材料 |
18,000 |
100 |
1,800,000 |
消費単価=(1,000,000+2,400,000+3,600,000-1,800,000)/(100+300)=13,000
これにより、当期に材料費となるのは5,200,000となります。
仕掛品、製品等に棚卸が無いとした場合は上記の差額(400,000)だけ税務上の方は売上原価が少なくなることになります。つまり総平均法で計算して申告していた場合は利益を少なく申告していたことになります。
この様な状況で税務調査行われると、申告漏れを指摘されることとなり、修正申告(追徴税額)が発生します。
そのため、棚卸資産の評価方法には注意が必要です。
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