原価計算と税務
原材料受入差額
会計上では、「材料受入価格差異」といい、
原価差異の会計処理は、
- 実際原価計算制度における原価差異の処理は,次の方法による。
材料受入価格差異は,当年度の材料の払出高と期末在高に配賦する。
この場合,材料の期末在高については,材料の適当な種類群別に配賦する。 - 標準原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
原価差異はすべて実際原価計算制度における処理の方法に準じて処理する。
となっています。
税務上では、
1.原則
原価差額のうち期末棚卸資産に対応する部分の金額は、当該期末棚卸資産の評価額に加算する。
となっています。
このため、材料を数種類使用している場合の計算は以下のようになります。
【前提】
三種類の材料を使用しているもととし、それぞれ期首棚卸はないものとします。
A材料
当期購入分 @101:2000個
材料払出分 @100:1500個
B材料
当期購入分 @199:1000個
材料払出分 @200: 900個
C材料
当期購入分 @305: 100個
材料払出分 @300: 80個
まず、「材料受入価格差異」は
A材料分
(101-100)*2,000=2,000
原材料払出高分:2,000*1,500/2,000=1,500
期末材料棚卸分:2,000*500/2,000=500
B材料分
(199-200)*1,000=-1,000
原材料払出高分:-1,000*900/1,000=-900
期末材料棚卸分:-1,000*100/1,000=-100
C材料分
(305-300)*100=500
原材料払出高分:500*80/100=400
期末材料棚卸分:500*20/100=100
となり、
材料受入価格差異を含めた期末材料棚卸高は
100*500+200*100+300*20=76,000
76,000+(500-100+100)=76,500
であり、翌期の期首材料棚卸高となるため翌期の計算は処理に手間がかかります。
そのため税務上では、
(原材料受入差額の処理の簡便計算方式)
「法人が原材料の受入れについて見積原価等を採用している場合に生ずる原材料受入差額について、当期原材料払出高と期末原材料棚卸高とに適正に配賦し、期末原材料棚卸高に対応する部分の金額を個々の資産に配賦しないで一括して処理しているときは、これを認める。
(注) 当期原材料払出高に対応する原材料受入差額は当期の原価差額に、期末原材料棚卸高に対応する原材料受入差額は翌期の製造原価に含めることに留意する。」
という簡便法があります。
これを使えば、材料受入価格差異は以下のような仕訳で済みます。
<期末>
(棚卸材料原価差額) |
500 |
(材料原価差額期末) |
500 |
棚卸材料原価差額は資産勘定として、貸借対照表に記載することとなります。
<翌期>
翌期に発生した原価差額とは別に取扱い、一括して処理することとなります。
(製造原価) |
500 |
(棚卸材料原価差額) |
500 |
また、材料受入価格差異を含めた当期原材料払出高は、
A材料:100*1,500+1,500=151,500
B材料:200*900-900=179,100
C材料:300*80+400=24,400
となります。
この当期原材料払出高に対応する原価差額に関する調整は、仕掛品、半製品、製品といった段階的な調整方法(いわゆるころがし方式)で行うこととなりますので、計算に手間がかかるのは免れません。
ただし、税務上では簡便調整計算を適用することができます。(簡便調整計算については、ブログの「原価計算と税務(原価差額の調整方法)」を参照願います。)
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