原価計算と経営・受注品製造業の原価管理

原価計算と経営

受注品製造業の原価管理

製品を受注して製造する事業を行っている会社においては、それぞれの製品の原価を把握していなければ、それぞれの製品で利益が出るのかどうか判らないことになってしまいます。

また、通常は期末時点で完成していない製品があるものと思われますので、仕掛品の金額を計算しておかなければ決算書を作成することも出来ないことになってしまいます。

このため製造業を営んでいる場合は、原価計算及び原価管理を行う必要があることとなります。しかし中小企業(特に小規模企業)の場合は原価計算のための専用ソフト等を導入することは金銭的に難しい状況にあるかと思います。

そこで、一般の会計ソフトとエクセルを利用して簡便的に原価計算及び原価管理を行う方法について以下に説明致します。

製品別の金額を把握する必要がありますが、一般の会計ソフトではそうような入力をするようにはなっていません。

そこで、補助簿を使用することによって製品別の金額を把握するようにします。

購入部品代とか外注加工費などで、使う製品ごとに金額を把握することが可能なものについては、製品ごとに補助簿を作成します。
つまり、購入部品費の勘定に“製品X”という補助簿を作成して、そこに“製品X”の為に購入した部品の金額を入力すれば、“製品X”の購入部品費は自動的に集計されることとなります。

製品“304”~“405”の補助簿を作成した場合での4月分を集計したものを下記に示します。(この例では、部品費と外注加工費で作成してあります。)

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次に、加工する材料等については補助簿を作成せず、そのまま購入したときの金額を入れていくようにします。労務費・経費についても同じです。(この後、集計した材料費・労務費・経費を一定の基準で製品に配賦(分配)します。)
一か月分を集計したものを下記に示します。

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ここで、配賦の方法ですが、材料費は製品に使用した重量を、労務費・経費は製品の材料加工及び組立に直接要した作業時間を使うこととします。
そのためには、作業者がどの製品にどのくらい材料を使用して、その加工等にどのくらいの時間を要したかを把握しておく必要があります。そのためには、作業日報等を作成することが大切です。

その作業日報等を毎月集計して製品別(JOB別)の作業表を作成します。
下記に一例を載せておきます。

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これらをもとに、原価計算表をエクセル等で作成します。

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このように、材料費・労務費・経費を製品(JBO)ごとに配賦(分配)することが出来ます。また、月末の材料費の棚卸高も計算できます。

これにより、当月発生分の金額を製品ごとに分け入ることが出来ましたので、次に前月末の仕掛品の明細等を使って、原価管理表を作成します。

下記に示します。

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この様に、製品別の原価及び売価により製品ごとにどのくらい利益が発生したのかわかると同時に、月末の仕掛品の金額も判明します。

これらにより計算された、材料費、仕掛品等の数値を会計に入力すれば、以下のような製造原価報告書を作成することが可能です。

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小規模企業の場合であれば、一般の会計ソフトとエクセル等を使用することにより(製品ごとの作業日報をしっかり作成する必要はありますが。)原価計算と原価管理を行うことができます。

(注)この方法を行う場合には、事前に税務署に届出等が必要になりますのでご注意願います。
もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「原価計算のセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ものづくり会計研修会」をご覧ください。

また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。