原価計算と税務
原価差額の調整方法
原価差額及び原価差額が少額な場合の処理についてはブログ「原価計算と税務
原価差額の調整(調整省略の場合)」を参照願います。
ここでは、原価差額が比較的多額の場合(総製造費用の1%を超える場合)についての会計処理について説明したいと思います。
会計処理
会計上では、
原価差異の会計処理は、
1.実際原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が生ずる場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。
(1) 個別原価計算の場合 次の方法のいずれかによる。
イ 当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に指図書別に配賦する。
ロ 当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦する。
(2) 総合原価計算の場合 当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦する。
2.標準原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
原価差異はすべて実際原価計算制度における処理の方法に準じて処理する。
となっています。
税務上では、
1.原則
原価差額のうち期末棚卸資産に対応する部分の金額は、当該期末棚卸資産の評価額に加算する。
となっています。
このため原価差額の調整は、仕掛品、半製品、製品といった段階的な調整方法(いわゆるころがし方式)で行うこととなります。
ここで以下の例で計算してみます。
【前提】
1種類の製品を製造しており、会計処理は標準原価計算(パーシャルプラン)で行っており加工進捗度は1とします。また、期首には棚卸資産は無いもとします。
材料
当期発生額 1,414,000(1,400個)
仕掛品投入額 1,212,000(1,200個)
期末棚卸額 202,000( 200個)
労務費
当期発生額 905,000
仕掛品投入額 900,000
原価差額 5,000
間接費
当期発生額 303,000
仕掛品投入額 300,000
原価差額 3,000
仕掛品
完成品原価 2,000,000(1,000個)
期末仕掛品額 200,000( 100個)
原価差額 212,000
製品
売上原価 1,900,000( 950個)
期末製品額 100,000( 50個)
ますは、仕掛品で原価差額の労務費分(5,000)と間接費分(3,000)と材料費分(212,000)分を期末分と完成品原価に按分します。
期末分:(5,000+3,000+212,000)*100/(1,000+100)=20,000
完成品:220,000-20,000= 200,000
このため仕掛品期末棚卸高は 200,000+20,000=220,000
となります。
つぎに製品について上記の完成品対応分について計算します。
期末分 :200,000*50/(950+50)= 10,000
売上原価分: 200,000-10,000= 190,000
このため、製品期末棚卸高は 100,000+10,000=110,000
となります。
このように、期首棚卸が無い状況でも調整の計算は煩雑になります。
このようなことから、税務上では以下のようなものがあります。
「原価差額の簡便調整方法」
法人が各事業年度において生じた原価差額を仕掛品、半製品及び製品の順に調整することをしないで、その原価差額を一括し、次に掲げる算式により計算した金額を期末棚卸資産に配賦したときは、これを認める。
となっています。
また、
「原価差額を一括調整した場合の翌期の処理」
法人が原価差額を個々の棚卸資産に配賦しないで一括して処理している場合には、その一括して処理している金額は、翌事業年度の損金の額に算入することができる。
とあります。
このため、簡便法によって一括配賦した原価差額は、翌期において発生した原価差額とは別に取扱い、翌期において一括して損金の額に算入することになります。
上記の例を使って計算してみますと、
配賦額:(5,000+3,000+212,000)*(200,000+100,000)/(1,900,00+300,00)=30,000
となります。
処理としては、
<期末>
(売上原価) (棚卸資産原価差額) |
190,000 |
(原価差額) |
220,000 |
棚卸資産原価差額は資産勘定として、貸借対照表に記載することとなります。
<翌期>
翌期に発生した原価差額とは別に取扱い、一括して処理することとなります。
(売上原価) |
30,000 |
(棚卸資産原価差額) |
30,000 |
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