中小企業のコスト削減
飲食業におけるコスト削減
<コスト削減をするためには>
飲食業において儲けが少ないので何とかしたいとかさらに利益を上げたいとなった場合には、まず売り上げを増やすことを思い浮かべるのではないでしょうか。
ただし単に売り上げが増えたからと言って利益が増えるとは限りません。コスト(原価)がかかっていれば売り上げが増えても利益は出ません。そこでコスト改善が必要となります。(ここではコスト削減のかわりにコスト改善という言葉を使用します。単にコストを下げるだけでは無く、利益を増加させるための改善を含めているためです。)
しかしコスト改善だからと言って現状がわからなければ対応できません。それがわかればコスト改善の方法も見えてくることとなります。
そこで、いくらで出来ているかを知ることが大切です。いくらで出来ているか知る方法が“原価計算”です。
通常、飲食業で原価計算の話になると「原価率」という言葉が出てきます。
これは売上高に占める原価の割合のことですが、一般にはこの原価の中身は材料費となっています。
しかし、材料費だけでは本当のコスト改善は出来ません。そこでコスト改善に有効な原価計算の方法及びコスト改善への適用方法について順番に説明していきたいと思います。
Ⅰ.原価計算の方法
実際の例で説明したいと思います。まず、一杯のラーメンの原価を計算する場合です。
サンプルとしてのラーメンを作り、それに使用した材料の量と金額及びそれを作るのに要した時間を調べます。(以下にその例を示します。)
【材料費】
材料名 | 仕入価格 | 仕入単位 | 使用量 | @金額 | 一杯当金額 |
麺 |
4,500 |
100玉 |
1玉 |
45.00 |
45.00 |
スープ |
5,500 |
50,000cc |
300cc |
0.11 |
33.00 |
醤油だれ |
1,000 |
1,000cc |
30cc |
1.00 |
30.00 |
チャーシュウ |
3,100 |
50枚 |
1枚 |
62.00 |
62.00 |
ネギ |
1,980 |
30本 |
0.3本 |
66.00 |
19.80 |
計 |
189.80 |
【加工費】
処理名 | 時間(分) | 単価(円/H) | 一杯当金額 |
スープ処理 |
0.70 |
1,000 |
11.66 |
麺処理 |
4.00 |
1,000 |
66.67 |
トッピング |
0.57 |
1,000 |
9.50 |
配膳 |
0.10 |
1,000 |
1.67 |
計 |
5.37 |
89.50 |
合計 279.30
と一杯のラーメンを作るのに標準的に直接要した費用を計算することが出来ます。
この原価計算の方法は「直接標準原価計算」と言います。
Ⅱ.コスト改善方法の検討
原価が計算できますと、ラーメン一杯の原価だけではなくその明細も分かることとなります。これらを利用することによりコスト改善を検討することが出来ます。
コスト改善には大まかに次の3種類があります。
① 材料費の改善
② 加工費の改善
③ 売上の改善
それぞれについてもう少し詳細に説明します。
(1).材料費の改善
これには2種類の対応があります。
- 純粋に材料費の購入価格を下げる方法。(コスト削減です。)
- 材料の無駄を減らす方法。
この無駄があるかどうかは、先ほどの原価計算で計算した詳細データと実際の使用量とを比較することで分かります。
例えば1日にラーメンが100杯出たときに、ネギの使用量が50本だとします。原価計算上は0.3本*100杯=30本のはずですので当初の見込より多く使用していることがわかります。その原因を調べることで改善することが出来ます。
(2).加工費の改善
これにも2種類の改善方法があります。
- 純粋に加工時間を下げる方法
作業の内容を分析して一杯のラーメンを作る時間を減らす方法です。ただし、この方法ではコストが減らない場合があります。いかに早く作っても一日に売れる量が同じなら、支払う人件費(加工費)は変わりません。改善するのは、お客様が常に並んでいて、作れば作るほど売れる場合だけです。 - 無駄な人を雇わない方法
ラーメンが1杯6分で出来るとした場合、1人で1日(8時間)に作れる最大の数は80杯となります。作る人が2人で1日に出る量が100杯であったら、最大で作れる量は160杯ですので60杯分の人件費が無駄になっていることになります。昼食時等忙しいときのみパートを雇うことで対応できるなら人件費を改善できます。
3.売上の改善
売価のバランスをとる方法
これはどういう事を言っているかといえば、ラーメンの売価が650円、チャーシューを5枚乗せたチャーシュウメンの売価が850円だとします。
原価計算をしておけば、それぞれの材料費のみの原価率はラーメン(29%)チャーシュウメン(51%)とわかります。
この場合、チャーシュウメンに人気が出てたくさん売れた場合はチャーシュウメン一杯当りの利益が少ないので、忙しくても儲からないことになります。
そこで、売価のバランスをとることが大切になります。ラーメンと同じ原価率で売価を考えると1400円となります。この価格が最良だというわけではありませんが、原価と売価とを考慮することで利益の改善が見込まれます。
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