ソフトウェアと税務・ソフトウェアの国際取引

ソフトウェアの国際取引(クロスボーダー取引)

ソフトウェアと税務
ソフトウェアの国際取引

(1)  概要
ソフトウェアを海外から購入するなどの国際取引(クロスボーダー取引)も増加しています。これらの取引には色々な税金が課される場合もあるため、税務の面から述べてみたいと思います。

(2)取引の種類
色々なパターンがあるかとは思いますが、次の2種類を例とします。

①ソフトウェアを国外企業から購入する場合。
(国内に支店を有する場合を含む。)
②国外企業のソフトウェアを代理店として国内で販売する場合
(国内に子会社・支店を有しない場合。)

(3)購入する場合

①パッケージソフトウェアを購入する場合
これは商品を購入(輸入)する場合と同じとなりますので、基本的に輸入に伴う消費税が課されます。

②インターネット等を通じて購入する場合
この場合は電気通信利用役務の提供に該当します。さらにその中の「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当しますので、その国外企業が以下のいずれに該当するかによって変わります。

(a)登録国外事業者
購入代価は消費税の計算上、仕入税額控除の対象となります。この場合、請求書等には登録番号と課税資産の譲渡等を行った者が消費税を納める義務がある旨の記載のあるものが必要となります。

(b)(a)以外の国外事業者
購入代価は消費税の計算上、仕入税額控除の対象になりません。

 

(4)代理店として国内で販売する場合

①パッケージソフトウェアを購入・販売する場合
これは商品を購入(輸入)して、国内で販売する場合と同じとなりますので、購入(輸入)時に基本的には輸入に伴う消費税が課されます。販売する時は、国内での販売となりますから売上にかかる消費税が発生します。

②販売するための権利を取得して、インターネットを通じて配信する場合
国外事業者に支払う対価は、ソフトウェアに係る著作権等の譲渡又は貸付に該当しますから、電気通信回線を介して行われる役務の提供には該当しません。したがって、国外取引として消費税の課税対象外となります。

インターネットを通じたソフトウェアの販売は、電気通信利用役務の提供に該当します。そのため、国内取引として消費税の課税対象となります。

 

国外企業が、日本国内において業務を行う者から受ける著作権の使用料で、国内業務に係るものについては、国内源泉所得として源泉徴収が必要となります。その為、支払時に源泉徴収を行うこととなります。

ただし、租税条約を結んでいる国の国外企業の場合はその国との租税条約の内容を確認する必要があります。例えば国外企業が米国の企業である場合には、日米租税条約により、著作権の使用料は特典制限条項により日本では課税されないため、源泉徴収は必要ありません。

 

ソフトウェアは著作物に該当することから、その購入・販売については著作権法を含めた検討を行う必要があります。また、海外との取引にはその国との租税条約も関係してきますから、販売形態や取引の実体を十分に吟味する必要があります。今回の例も限定条件が多々あるため、それらの内容が若干でも異なる場合は結果が異なりますので十分ご注意下さい。

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「ソフトウェアのセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ソフト会計研修会」をご覧ください。

また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。

ソフトウェアと税務・クラウドサービス用ソフトウェアの取扱

 

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ソフトウェアと税務

クラウドサービス用ソフトウェアの取扱

(1)  概要

会計上でソフトウェアの取扱については、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下「実務指針」という。)において、

「市場販売目的のソフトウェア」

「自社利用のソフトウェア」

に区分しています。

「実務指針」において、自社利用のソフトウェアが資産計上される場合の一般的な例として、
{ 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェア等
を利用することにより、会社(ソフトウェアを利用した情報処理サービスの提供者)
が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得ることとなる場合 }
というのがあるため、

クラウドサービス用ソフトウェアも「自社利用のソフトウェア」として考えられる場合がありますが、サービスの形態が単純でない場合もあり、単純に「自社利用のソフトウェア」とすることは出来ません。

そのため、社団法人情報サービス産業協会(JISA)がクラウド(SaaS・ASP)用ソフトウェアについて下記のような内容を公表しました。

{ SaaS・ASP事業用ソフトウェア・サービスの4類型

「一般的なASPサービス」 :
データセンターにサーバーを設置し、インターネット等を通じて、ユーザにサービスを提供(ユーザは、使用量や期間に応じて料金を支払う)する形態。ユーザはデータセンターのサーバーを通じてのみサービス提供を受けることができる。
特定の顧客向けに制作するソフトウェア(アウトソーシングサービス目的のソフトウェアなど)と不特定多数の顧客向けに制作するソフトウェア(共同利用型サービス目的のソフトウェアなど)がある。

「一般的なASPサービスと通常のパッケージ販売の混合型」:
一般的なASPサービスに加えて、一時金による永続的な利用(ライセンス購入)の選択ができる形態。

「パッケージソフトの期間利用型」:
不特定多数の顧客向けに制作したソフトウェアを、インターネット等を通じてユーザにライセンスを提供し、ユーザはそのソフトウェアをPC・サーバー等にインストールすることにより、ソフトウェアを利用する。ユーザは、使用量や期間に応じて料金を支払う形態。

「パッケージソフトの期間利用型と通常のパッケージ販売の混合型」:
パッケージソフトの期間利用型に加えて、一時金による永続的な利用(ライセンス購入)の選択ができる形態。

そして、「一般的なASPサービス」の場合、「自社利用のソフトウェア」として会計処理する。

これに対し、「パッケージソフトの期間利用型」は通常のパッケージソフトと同様に「市場販売目的のソフトウェア」として会計処理する。

となっています。

(2)  自社利用のソフトウェアの処理

<会計上>

「実務指針」により

自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する。

自社利用のソフトウェアに係る資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定する。そのような証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書又はソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられる。

となっているため、

【ソフトウェアの制作予算が承認されるまでの製作費は費用(研究開発費)として処理し、その後の分についてはソフトウェアとして資産計上する。】

こととなります。

 

ソフトウェアの償却方法は、

「実務指針」により

自社利用のソフトウェアについては、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきであるが、一般的には、定額法による償却が合理的である。償却の基礎となる耐用年数としては、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきであるが、原則として5年以内の年数とし、5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要である。

とあるため、

【5年の定額法による。】

こととなります。

 

<税務上>

自社利用のソフトウェアについては、
{ ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる費用;
次に掲げるような費用の額は、ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる。

  1. 自己の製作に係るソフトウェアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
  2. 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る。)
  3. 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

となっていますので、研究開発費については費用として処理することが可能です。

ただし、「自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る。」となっているため、少しでも将来の収益獲得または費用削減になる部分はソフトウェアとして計上する必要があります。

一般に企業がクラウドサービス用ソフトウェアを研究開発する場合は製品化を目的としているものと思われますので、普通「その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなもの」にはならないものと考えられます。

そのため会計上は、「将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点」、つまり制作予算が承認された時点から資産に計上すれば良いのですが、税務上は、「その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなもの」となるため、

【制作開始時点から資産計上する。】

必要があると考えられます。

ソフトウェアの償却方法は、

ソフトウェアの耐用年数は「複写して販売するための原本」が3年、「その他のもの」が5年ですので、

【5年の定額法による。】

こととなります。

償却方法については、会計上と同じ扱になります。

 

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「ソフトウェアのセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
詳細は「ソフト会計研修会」をご覧ください。

また、ご質問をご希望の場合は、「コンサルタント会員」にて受け付けております。

 

ソフトウェアと税務・バージョンアップ費用の取扱

 

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ソフトウェアと税務

バージョンアップ費用の取扱

(1)  概要

市場販売目的ソフトウェアでのバージョンアップ費用について、購入者側と制作者側の両側面から会計・税務での注意点を述べてみたいと思います。

(2)  バージョンアップの種類

バージョンアップは税務(会計)処理上以下の3種類に分類されます。
①    障害除去・機能維持
②    既存価値の向上(大幅ではない場合)
③    著しい改良(大幅な場合)

具体的な内容としては、

消費税率の変更に対応したバージョンアップなどの外部的要因により対応せざるをえない場合等は{①障害除去・機能維持}のバージョンアップが該当します。(会計上、機能維持活動はバージョンアップに該当しないと「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」に記載されていますので正確には会計上ではバージョンアップといわないこととなります。)。

次に機能を追加または操作性を向上させるものとして例えばWindows8.1のタッチパネル対応等によりバージョンアップしたものは{②大幅ではない場合}に該当するものと考えられます。

さらに製品の設計をやり直すなどしてパソコン用をタブレット用に対応させたバージョンアップでは、{③大幅な場合}に該当するものと考えられます。

 

(3)会計上・税務上の処理

<製作者側の処理>

会計上では、

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」に


②(大幅ではない場合)のバージョンアップは、基本的な設計を大きく変更することなく、ソフトウェアの価値を高めるものと考えられます。したがって、バージョンアップに要した費用は資本的支出として資産計上され、完成しているソフトウェアの未償却残高と合算されることになります。
③(大幅な場合)のバージョンアップは、製品の設計を初めからやり直すなど、著しい改良に該当するバージョンアップと考えられます。したがって、新しい製品を制作する場合と同様に、新しいバージョンで最初に製品化された製品マスターの完成時点までの費用を研究開発費として処理することになります。

とあります。

税務上では、

{ (ソフトウェアに係る資本的支出と修繕費)
法人が、その有するソフトウェアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。 }

とあります。

上記のことから、

会計上は
①    修繕費(費用)として処理する。
②    資本的支出として完成しているソフトウェアに合算される。
③    製品マスターの完成時点までの費用を研究開発費としてその後に発生したものはソフトウェア。

となります。

(③の詳細はブログ「市場販売目的ソフトウェアの原価」を参照願います。)

 

税務上は
①    会計と同様の処理。
②    税務上で資本的支出は減価償却資産を新たに取得したものとして減価償却を行いますので、新たなソフトウェアを取得したものとして処理します。
③    会計と同様の処理。

となります。

 

<購入者側の処理>

会計上は
①    修繕費(費用)として処理する。
②    資本的支出として完成しているソフトウェアに合算される。
③    新たなソフトウェアとして計上する。

となります。

税務上は
①    会計と同様の処理。
②    税務上で資本的支出は減価償却資産を新たに取得したものとして減価償却を行いますので、新たなソフトウェアを取得したものとして処理します。
③    会計と同様の処理。

となります。

 

(3)  修繕費の税務上と取扱

税務上では、資本的支出と修繕費について

{ (少額又は周期の短い費用の損金算入)
一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

  1. その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合
  2. その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

とか

{ (形式基準による修繕費の判定)

一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

  1. その金額が60万円に満たない場合
  2. その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

また、

{ (資本的支出と修繕費の区分の特例)

一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。 }

という規定がありますが、

 

これらが適用できる場合には修繕費に計上出来る可能性が高まりますが、ソフトウェアに対して支出する費用が、ある意味で特殊なものですので、区分が明らかでない場合に該当するかどうかの判断に十分な注意が必要です。

 

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「ソフトウェアのセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
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ソフトウェアと税務・市場販売目的ソフトウェアでの試験研究費の取扱

 

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ソフトウェアと税務

市場販売目的ソフトウェアでの試験研究費の取扱

(1)  前提

試験研究費を使っている企業には税制上の優遇措置があります。研究所を持つ大企業ならともかく、中小企業にとって、研究開発や試験研究という活動は縁遠いものと思われていますが、「市場販売目的ソフトウェア」を開発している企業にとっては関係する場合があります。

 

(2)  試験研究費がある場合の税務上の優遇措置

税務上では
<総額に係る税額控除>
{ 青色申告書を提出する法人の各事業年度において、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合には、当該法人の当該事業年度の所得に対する法人税の額から、当該事業年度の当該試験研究費の額の100分の10(試験研究費割合が100分の10未満であるときは、当該試験研究費割合に0.2を乗じて計算した割合に100分の8を加算した割合「試験研究費の総額に係る税額控除割合」という。)に相当する金額(「税額控除限度額」という。)を控除する。ただし、当該税額控除限度額が、当該法人の当該事業年度の所得に対する法人税の額の100分の20に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の20に相当する金額を限度とする。 }

というものがあります。

また、中小企業者には
<中小企業者の特別控除>
{ 中小企業者等で、青色申告書を提出するものの各事業年度において、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合には、当該中小企業者等の当該事業年度の所得に対する法人税の額から、当該事業年度の当該試験研究費の額の100分の12に相当する金額(中小企業者等税額控除限度額)を控除する。ただし、当該中小企業者等税額控除限度額が、当該中小企業者等の当該事業年度の所得に対する法人税の額の100分の20に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の20に相当する金額を限度とする。 }

があります。

さらに、中小企業者には
<増加等に係る税額控除>
{ 青色申告書を提出する法人が、平成20年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該法人の当該事業年度の所得に対する法人税の額から、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除する。ただし、当該各号に定める金額が、当該法人の当該事業年度の所得に対する法人税の額の100分の10に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の10に相当する金額を限度とする。

  1.  当該法人の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額が、当該法人の比較試験研究費の額を超え、かつ、基準試験研究費の額を超える場合 当該法人の当該事業年度の当該試験研究費の額から当該比較試験研究費の額を控除した残額の100分の5に相当する金額
  2.  当該法人の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額が当該事業年度の平均売上金額の100分の10に相当する金額を超える場合 当該超える部分の金額に超過税額控除割合(当該事業年度の試験研究費割合から100分の10を控除した割合に0.2を乗じて計算した割合をいう。)を乗じて計算した金額

があります。

 

これらのことより、

【試験研究費を使っていれば税額控除の優遇措置を受けることが可能。】

となります。

 

(3)ソフトウェアと研究開発費

会計上では、ソフトウェアについて、

{ 市場販売目的のソフトウェアの制作に係る研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」の完成時点である。この時点までの制作活動は研究開発と考えられるため、ここまで発生した費用は研究開発費として処理する。 }

とあります。

また、税務上も同じような扱いとなっています。

(詳細は、ブログ「市場販売目的ソフトウェアの原価」を参照願います。)

 

以上のことから、

【税務上の試験研究費とソフトウェアでの研究開発費が同じ範囲のものであれば市場販売目的のソフトウェアの研究開発費で税額控除の適用が受けられる。】

こととなります。

 

(4)試験研究費と研究開発費との関係

各々定義としては、

<試験研究費(税務)>
製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用で次に掲げる費用をいう

  1.  その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもつて当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。)及び経費
  2.  他の者に委託して試験研究を行う法人の当該試験研究のために当該委託を受けた者に対して支払う費用
  3.  技術研究組合法第9条第1項の規定により賦課される費用

 

<研究開発費(会計)>

研究とは新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求をいう。
開発とは新しい製品・サービス・生産方法・についての計画もしくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画もしくは設計として研究の成果その他の知識を具体化することをいう

 

定義の相違点としては、

【試験研究費は、製品の製造や技術の改良のように工学的(自然科学的)なものを意味しており、研究開発費には開発費として新しいサービスに関する調査・探究が含まれているため、試験研究費の範囲の方が狭いこと。】

となります。

 

(5)ソフトウェアと試験研究費

市場販売用ソフトウェアに係る研究開発費は、

【ソフトウェアという製品の改良等に係るものでもあることから、基本的には税額控除の対象となる試験研究費に含まれるものと考えられる。】

ことになります。

ただし、形式的にすべての研究開発費が試験研究費に該当するかどうかは、計上されている研究開発費の詳細を確認する必要があります。特に試験研究費の人件費には、「専門的知識をもつて当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。」という制限もあるため注意が必要です。

 

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「ソフトウェアのセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
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ソフトウェアと税務・市場販売目的ソフトウェアの原価

ソフトウェアと税務

市場販売目的ソフトウェアの原価

(1)市場販売目的のソフトウェアの会計区分

<会計上>

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下「実務指針」という。)において
{ 研究開発費はすべて発生時に費用として処理しなければならない。 }
とあります。

また、ソフトウェアについては、
{ 市場販売目的のソフトウェアの制作に係る研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」の完成時点である。この時点までの制作活動は研究開発と考えられるため、ここまでに発生した費用は研究開発費として処理する。 }

とあるため、市場販売目的ソフトウェアの原価に算入されるのは、「最初に製品化された製品マスター」の完成時点以後の費用となります。

製品マスターの制作原価については「実務指針」によると、

{ 製品マスターについては、適正な原価計算によってその取得原価を算定する。製品マスターの制作原価は、制作仕掛品についてはソフトウェア仮勘定などの勘定科目により、また、完成品についてはソフトウェアなどの勘定科目によって、いずれも無形固定資産として計上する。 }

となっています。

以上により、

【市場販売目的のソフトウェアの制作費用のうち、「最初に製品化された製品マスター」の完成時点までに発生した費用は研究開発費として処理し、その後に発生したものについては基本的に無形固定資産として資産計上する。】

こととなります。

<税務上>

ソフトウェアについては税務上、

{ 自己の製作に係るソフトウェアの取得価額等;
自己の製作に係るソフトウェアの取得価額については、当該ソフトウェアの製作のために要した原材料費、労務費及び経費の額並びに当該ソフトウェアを事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となる。この場合、その取得価額については適正な原価計算に基づき算定することとなるのであるが、法人が、原価の集計、配賦等につき、合理的であると認められる方法により継続して計算している場合には、これを認めるものとする。 }

となっています。

また以下のような特例があり、

{ ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる費用;
次に掲げるような費用の額は、ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる。

  1. 自己の製作に係るソフトウェアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
  2. 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る。
  3. 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

とあります。

このため、税務上も

【ソフトウェアの研究開発費はその取得価格に算入しなくてよいこととなります。また市場販売目的のソフトウェアはその算入に限定はありません。(自社利用のソフトウェアには限定があります。)】

(2)市場販売目的のソフトウェアの会計処理

<会計上>

ソフトウェア(無形固定資産)の償却方法は「実務指針」によると、

{ 市場販売目的のソフトウェアに関しては、ソフトウェアの性格に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきである。合理的な償却方法としては、見込販売数量に基づく方法のほか、見込販売収益に基づく償却方法も認められる。ただし、毎期の減価償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない。 }

となっているため、

  1. 見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく減価償却額
  2. 残存有効期間に基づく均等配分額

1.2.いずれか大きい方を減価償却額とする。

ことになります。

 

また、製造原価の計算における取扱いについては「実務指針」によると、

{ ソフトウェアの制作活動が製造原価の計算に適切に反映されるという観点からは、以下の方法によることが望ましいといえる。

  1. 製品マスターの制作原価は製造原価として計上し、当期製造費用から制作仕掛品と完成品を無形固定資産に振り替える。
  2. 製品マスターの償却は販売したソフトウェアに対応する償却額とし、ソフトウェアの売上原価に計上する。
  3. 製品としてのソフトウェアで販売されなかったもの及び複写等制作途上のものについては、棚卸資産の仕掛品として計上する(製品マスターの償却費は配分されるべき原価が確定しないため当該仕掛品の原価には含めない。)

 

以上のことより、

【製品マスターの償却は販売したソフトウェアに対応する分を、償却費として売上原価に計上する。】

こととなります。

 

<税務上>

ソフトウェアは税務上で無形固定資産に該当するため、原則として会計上と同じ扱いとなります。ただし、償却方法は「複写して販売するための原本」に対応するため、耐用年数3年の定額法のみとなります。

 

このため原則としては、

【製品マスターの償却は耐用年数3年の定額法により償却費として製造原価に計上する。】

こととなります。

 

ただし税務上の特例として

{ 製造原価に算入しないことができる費用;
次に掲げるような費用の額は、製造原価に算入しないことができる。
(6) 複写して販売するための原本となるソフトウェアの償却費の額 }

とあるため、

会計に準拠して

【製品マスターの償却は耐用年数3年の定額法により償却費として売上原価に計上する。】ことが出来ます。

もう少し細かな内容をお知りになりたい方は、当事務所で「ソフトウェアのセミナー」を行っておりますので、参加されてはいかがでしょうか。
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