原価計算と税務・貸方原価差額の調整

原価計算と税務

貸方原価差額の調整

会計上では、「原価差異」と言います。
原価差異の計算は、
原価差異=標準原価-実際原価
となり、
差異の差が
プラスのものを 「有利差異(原価差益)」
マイナスのものを「不利差異(原価差損)」
といいます。

税務上は
不利差異(原価差損)を「原価差額」
有利差異(原価差益)を「貸方原価差額」
といいます。

原価差額の調整は、確定した決算にて行うのが原則(その額が少額の場合は例外規定があります。詳細はブログ「原価差額の調整(調整計算省略)」を参照願います。)で、原価差額のうち期末棚卸資産に対応する部分の金額は、当該期末棚卸資産の評価額に加算することになっています。

このため、この差額を確定決算で行わず、申告調整で調整することは認められていません。ただし、貸方原価差額のうちには、確定決算を終えたあとの申告調整によって生ずるものもあることから、

税務上では、
(申告調整できる貸方原価差額)
「法人が棚卸資産につき算定した取得価額が《棚卸資産の取得価額》に規定する取得価額を超える場合のその差額のうち、法又は措置法の規定により損金の額に算入されないため確定申告に際して自己否認した金額から成る部分の金額については、当該申告に係る申告書においてその調整を行うことができるものとする。」
という規定があります。

このため、税務否認金から成る部分の金額については、法人がその事業年度の確定申告書において調整した時は、その計算は認められることとなります。

以下に一例を示します。
原価標準が
材料費2,000円、加工費2,000円、間接費3,000円
(間接費は製造に使用する1.5億円で償却年数5年の機械の償却費のみとし、年間1万個生産して、期首仕掛品はなく、期末仕掛品は2千個(完成換算率は1)で材料費と加工費には原価差異はなかったものとします。)

ここで、機械の実際購入額が2億円だとすると、
標準原価:(2,000+2,000+3,000)*10,000=70,000,000
実際原価:(2,000+2,000+4,000)*10,000=80,000,000
(減価償却費:200,000,000*0.2=40,000,000
一個当たり40,000,000/10,000=4,000)
原価差異:70,000,000-80,000,000=-10,000.0000
となり、不利差異(原価差損)が発生します。

そこで確定決算においてこの差額を製造原価と期末仕掛品に按分します。

標準原価では
製造原価 :70,000,000*8,000/10,000=56,000,000
期末仕掛品:70,000,000*2,000/10,000=14,000,000
ですが、これに原価差額を加えると、
期末仕掛品:14,000,000+10,000,000*2,000/10,000=16,000,000
となり、この数字で確定決算を行うことになります。

ここで税務否認金が出ることにするため、機械の法定耐用年数が10年であったとします。(5年で機械が陳腐化して買換えていたため会計上は5年で償却していたとの前提にします。)

こうしますと、税務上の減価償却費は、
200,000,000*0.1=20,000,000
であり、
減価償却超過額:40,000,000-20,000,000=20,000,000
が発生し確定申告書で加算調整が必要となります。

減価償却超過額のうちには期末仕掛品の分も含まれていますからその対応する分の金額
20,000,000*2,000/10,000=4,000,000
は確定申告書で減算調整することとなります。

(以下に申告調整の内容を示します。)

 

【別表四】

 区分 総     額

処分

留     保

社外流失
区分 金額

加算 減価償却
超過額

20,000,000

20,000,000

減算 仕掛品
償却調整

4,000,000

4,000,000

【別表五(一)Ⅰ】

区分 期首現在利益積立金額

当 期  の  増 減

差引翌期首現在
利益積立金額

減価償却
超過額

20,000,000

20,000,000

仕掛品

△4,000,000

△4,000,000

 

となります。

 

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